1.はじめに
「露文和訳」の配点は100点(400点中)。
判定基準は、「一般的な事柄について文章を読むことができ、専門的な文章についても、必要な内容を読み取ることができる」ぐらいの「読解力」、とのことです。
筆記試験(「文法」、「露文和訳」、「和文露訳」)の試験時間は120分。
「文法」、「和文露訳」に意外と時間がとられるので、「露文和訳」はできれば30分以内で解答をしたいところです。
題材は小説やエッセイから抜粋した文章です。ただ、出典は明らかにされていません。
難解な単語には訳語がありますが、読解にはロシア語の相応の語彙力が必要です。判定基準の約3000語の語彙数では明らかに足りません。
さらに、講評・解説を読むと、「露文和訳」なのですから、訳した日本語の適切さも求められているみたいです。日本語力も必要です。
ただ、平均点は他の科目と比べて高いのが特徴で、得意科目にしている学習者も多いのかもしれません。
2.傾向
手元にある第60回以降の「露文和訳」の問題の「テーマ、語数」は以下のとおりです。
第60回 小説「コマロフ」の抜粋(204語)
第62回 文豪レフ・トルストイ(168語)
第64回 若い劇団員たちの礼儀作法(193語)
第66回 (他の年度とは形式が違って、Ⅰの文法の長文内のテキストの和訳。小説の一部。2題(91語、75語))
第68回 帰還兵の大学生活(187語)
第70回 全体的学習法と機械的暗記(157語)
第72回 古代中国の磁器(176語)
第74回 鳥の巣作りの不思議(151語)
第76語 芸術とは何か(161語)
第80回 人間、自然、科学(158語)
第82回 クラムスコイの「見知らぬ女」の魅力(162語)
テーマは多岐にわたっていますが、ほとんど人文系のテーマです。ニュースや時事問題、専門的な学術文献などではありません。
文字数はだいたい150~200語です。
出典は明記されていません。
ただ、調べればわかるものもあります。
例えば、第60回の題材は、旧ソ連・ロシアの作家ユーリー・ナビーギン(Набигин.Ю.М.1920~1994)の小説「Комаров」(1977)からの抜粋です。
ナビーギンはロシアでは学校のテストの題材によくなっていて、ЭГЭ (Единственный Государственный Экзамен (高校卒業資格の)統一国家試験)などにもたびたび出題されています。
3.対策
「露文和訳」の「読解力」向上のための対策としては、ロシアの高校生が読むぐらいの難易度の小説やエッセイをたくさん読んでいけばいいんじゃないでしょうか。
手元に本があればそれでいいし、ネットでロシアのサイトに入って、自分の好みの分野の文章を探してみるのも面白いと思います。
さらに試験対策としては、試験には制限時間があるので、やはり「速読」も大切な能力です。
私は「ロシア・ビヨンド」というサイトの記事をできるだけ速く読むということをしていました。
1日に2本ときめて、それをできるだけ速く読む。途中に分からない単語があってもいちいち辞書で調べないで、最後までとりえあず読み終える。
1級を受検する人で長い文章に慣れていない人は少ないと思いますが、私自身は絶対的なロシア語の読書量が足りないので、そんな速読対策を立てていました。
「はじめに」でも触れましたが、「露文和訳」の試験なのですから、翻訳した日本語の正しさも大切です。
各年度の講評を読むと、採点者は訳語の「正しさ、適切さ」にけっこう厳しいみたいです。
ただ、第80回の「露文和訳」の回答例は、正直、ちょっと日本語の文章としてどうなのかなって印象を受けてしまいますが、、、。