1.傾向
まずは「文法」からみていきます。
筆者の手元には第60回(2012年)以降の過去問があります。
「文法」の配点は100点(満点400点)で、ほぼ毎回以下の3つの大問からなっています(第66回だけ4つ)。
Ⅰ.副動詞・形動詞、副詞、慣用句 etc
Ⅱ.接頭辞+動詞語幹
Ⅲ.数詞
第68回以降は、基本的に順番もこのパターンです。
Ⅰは小問が10~20、Ⅱは小問が10、Ⅲが10。各小問の配点は公表されていません。
さらに、小問Ⅰの内訳は、各年度で副動詞・形動詞が50~80%を占めていて、その比重の高さがわかります。
小問の元になるテキストはロシアの作家、詩人の文章から引用されているようです。
例えば、第60回の文法のテキストは、アンドレイ・ヴォズネセンスキー(1933~2010)の「И хододно было младенцу в вертеле」の文章の一部です。
ただ、どの年度も試験用紙には出典は明らかにされていません。
ちなみに、アンドレイ・ヴォズネセンスキーは、日本でも有名な「百万本のバラ」の作者です。
2.対策
では、どんな問題が具体的に出されているのでしょうか。
まずは、「Ⅰ.副動詞・形動詞、副詞、慣用句etc」についてです。
第82回(2023年)の「文法Ⅰ」の冒頭の小問①から⑤は、「文法Ⅰ」のすべてのパターンがあるので、その文章の抜粋を元に検討していきましょう。
(抜粋) (略)Когда стоишь так один,не(①),лицом к лицу(②),то тобой исподволь(③) странное чувство:(略)И тогда все(④) представляется необычным и(⑤) этой тайны.
テクストに対する質問は、以下のとおりです。
1)①にшевелитьсяかшевельнутьсяのどちからの一方を副動詞形にしていれなさい。
2)②にприрода を適切な形にしていれなさい。必要であれば前置詞も使うこと。
3)③にохватывать овладевать обладать пленитьのどれか1つを必要な形にして入れなさい。
4)④にокружатьか окружитьのどちらか一方を形動詞の必要な形にしていれなさい。
5)⑤にпреисполнятьかпреисполнитьのどちらか一方を形動詞の必要な形にしていれなさい。
「文法Ⅰ」の設問はほぼこの形式です。
「文法Ⅰ」の合格判定基準の語彙数は「約3000語」と明記されているのに、テクスト全体を読みこなすにはそれ以上の語彙力が必要なうえにけっこうな長文です
でも、露文和訳ではないのだから全部を読む必要はありません。解答に必要な小問の前後の文脈をしっかりと読み込めばいいのです。
対策としては、教科書で副動詞・形動詞について十分に理解したうえで、小説や随筆、エッセイ、ニュースを読むときに常に意識して読んでいくことが重要だと思います。
副動詞・形動詞については、次の教科書が詳しいです。
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「副詞」、「慣用句」については、こつこつと語彙を増やしていくしか道はありません。
いろんな参考書が有り余るほどある英語とは違って、ロシア語はある程度以上のレベルになると自分自身でなんらかの工夫をすることも大切になってきます。
私は辞書が好きなので、分からない単語があって辞書をひくと、その単語だけを調べるのではなく、その単語のあるページをいつもさらっと読んでいました。
愛用している「プログレッシブ ロシア語辞典」(小学館)は、全頁をなんども読み込んでいるので、まだ2年間しか使っていないんですがボロボロです。
次に「Ⅱ.接頭辞+動詞語幹」の対策になります。
これにはなんと対策にぴったりの本があります。
「Чистая грамматика 」(Е.Р.Ласкарева) です。
アマゾンで売ってます。
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その「ЧастьⅤ ПРЕФИКСАЛЬНЫЕ ГЛАГОЛЫ」の項目です。
同書には基本的な動詞しか扱われていませんが、「接頭辞+動詞語幹」パターンは応用がきくので合格点をとるには十分なのです。
第80回(2022年)は、「живать(ся)/жить(ся)」でしたが、同書で勉強していた人にとっては簡単に合格点がとれたんじゃないでしょうか。
ただ、同書にはない動詞も当然あります。
それには過去問にでた動詞について、各接頭辞のパターンを自分で補足的に勉強しておけばいい話です。
さらに、余裕のある方はユーチューブでロシア語講座を検索して勉強されることをお勧めします。いいチャンネルがたくさんあります(日本人のチャンネルではなく、ロシア人の先生のチャンネルです)。
最後にきっと誰もが苦手意識をもっている「Ⅲ.数詞」。
効果的な学習方法について日本語で書かれた教科書は残念ながら私は知りません。数詞については覚えるしかありません。
数詞は完全に理解しようと思ったら、ユーチューブかなにかでロシアの生徒むけの「算数か数学」のチャンネルをみつけて勉強しないといけません。
でも、露検では合格点を取ればいいわけです。
それにはやはり過去問を徹底的にやるしかありません。
むしろ、過去問に出題された形式だけを完全に覚えておけば合格対策には十分です。
何回も繰り返し出題されている形式もあります。
3. 終わりに
以上で「文法」についてのおおざっぱな「傾向と対策」を終わります。
ちょっと雑すぎて参考にならないかもしれません。
以降は「露文和訳」、「和文露訳」、「聴取」、「会話」について「傾向と対策」を検討したうえで、実際に過去問を年度別に分析しながらさらに具体的に検討していこうと思っています。