mir821’s diary~露語学習帳〜

ロシア語を再勉強中。たまにランニング。

露検1級・第60回過去問~文法Ⅱ~

1.はじめに

 文法のカテゴリーのうち、「副動詞・形動詞etc.」、「接頭辞+動詞」の2大パターンは第60回から第82回までほぼ例外なく出題されていますが、近年のもうひとつの柱の「数詞」がない年もありました。

 それが第60回。題材は「否定代名詞」です。ちなみに第64回も「不定代名詞・否定代名詞」でした。

 1級の学習到達度判定基準は、「基本的には全ての文法事項を習得していることが条件。(略)、、「不定代名詞・否定代名詞(副詞)」、、(略)」と明記されているのですから、必ずしも「数詞」が出るとは限らないわけですね。

 否定代名詞というと、すぐに思い浮かぶ曲があります。

 ヴェロニカ・クルグロワの「Ничего не вижу」です。いい曲です。表情もジェスチャーも口パクも完璧です。なお、筆者は旧ソ連の懐メロファンでもあります。

youtu.be

2.検討

 とても素敵な曲を聴いてすっきりしたところで、文法Ⅱを検討していきます。

全部で10問あります。配点はわかりません。

 

【問題文】:Ⅱ.下線部に否定代名詞никто,некого,ничто,нечего,ничей,никакойのどれか一つを適切な形にして入れなさい。前置詞が必要な場合はそれをつけなさい。

 

1)Она редко рассказывала о своей жизни. Может быть,ей ____ было рассказывать.

(解答)

не о чем/нечего

(検討)

講評は「何も話すことがない」の意味から「нечего」も正解としていますが、рассказывать о чём という通常の格支配から判断して、「не о чём」が適切です、としています。

 この小問Ⅱは単に「否定代名詞」を問う問題ではなく、「動詞との語結合を考えたうえで前置詞が必要な場合はそれをつけて適切な形にする」というのが肝みたいです。

 1)を含め、後述する3)、5)、6)、7)、8)、9)は、動詞や慣用句と前置詞の基本的な語結合を習得しているかが問われています。

 なお、前置詞を伴う場合はни/неの間に入れて、前後にスペースを空けなければいけないことも忘れてはいけません。

 たとえば、基本的な動詞のдуматьからでも問題ができます。

a) Я ____ не думаю,просто отдыхаю.

答えは、「ни о чём」、ですね。 

なお、「否定代名詞」はロシアでは6年生の学習範囲です。母語話者にとっては小学生の科目です。

こんな風に教えているみたいです(↓)。

youtu.be

 

2)____ обстоятельства не оказывают влияния на его решение.

(解答)

никакие

(検討)

「обстоятельства 」を修飾する語句が入りますが、ここは「никакой」しか選択の余地がありません。そして、複数形に変化させることを忘れてはいけません。

 

3)Моя старшая сестра____ не хочет выходить замуж.

(解答)

ни за кого 

(検討)

「否定代名詞」を元に語結合の理解を試す問題です。「結婚する」は「выходить замуж за кого」なので、「ни за кого」になります。

 

4)На стук в дверь не было ____ ответа.

(解答)

никаого

(検討)

講評は、「『どんな返事も』という意味ですからникакогоが適切です。ただし、『誰の返事も』可能ですからничьегоも正解とします」としています。

文脈上、文法的に間違えじゃなければ複数正答もあるパターンです。

 

5)В молчании добро должно твориться,но ____ об этом толковать.

(解答)

нечего

(解答)

講評は、「толковатьはчто,о чёмという結合で使います。об зтомという言葉はもうすでにありますから、この文ではнечегоが正解です」、とあります。

 実は、この文はプーシキンの詩の一節です。1)~10)の小問のなかで、やっぱり光る文章ですね。

Александр Пушкин — О бедность! затвердил я наконец ~ Стих на Poemata.ru

 

6)Я хорошо знаю Антона и____ не поверю в то,что о нём говорят.

(解答)

ни за что

(検討)

講評は、「理由を表す表現のза чтоが否定されてни за чтоが入ります」となっています。

これは「ничто」の慣用句的な表現の理解を試す問題です。

参考までに「プログレッシブ・ロシア語辞典(小学館)」には次のような語句が掲載されています。

・без ничего (俗)(1)何も持たずに、手ぶらで (2)何も入っていない:суп без ничего 具なしスープ

・за ничто (話)ひどく安い値段で

・из ничего (1)無から、裸一貫から(作る、得る)(2)何でもないことから、必要もないのに(起こる、発生する)

・кончиться(закончиться) ничем 徒労(失敗)に終わる

・ничего не поделаешь (попишешь) しかたがない

・ни за что (на свете) どんなことがあっても、決して(・・ない、しない)

 Я ни за что не соглашусь.(私は絶対賛成しない)

・ни за что(ни про что)=(俗)ни за что про что (1)全く無駄に、いたずらに(2)何の理由もなく

・ни к чему (俗)(1)(述語)用がない、不要だ。Ему ни к чему.(彼は全然知らん顔だ)。(2)(述語)~する必要がない、~しても無駄だ。Ни к чему туда ехать.(そんなところに行く必要がない)(3)何の理由もなく、わけもなく

・ни при чём (話)(述語)~は無関係だ、~のせい(責任)ではない。Ты здесь ни при чём.(君はこの件に無関係だ)

・остаться ни при чём  (話)(述語)何も得るものがない

・ни с чем 何も得るところなく、手ぶらで

 

7)Его не уважают,не любят,потому что ему самому ____ дела нет.

(解答)

ни до кого

(検討)

講評は、「(кому) дело до кого という表現は『誰々は誰々に関心(関係、用事)がない』という言い方で使われ、この文では否定されて『彼自身は誰にも関心なない』という言い方で使われ、正解はни до когоとなります」となっています。

私はこの問題がさっぱり分かりませんでした。

プログレッシブ・ロシア語辞典」には、нет дела (与) до (生)で「~にとって~は関係(関わり)がない、構わない」として、例文は Ему дела нет до окружающих.(彼は周りの人などどうでもよい)を挙げています。

否定のほうから入るほうが理解しやすいかもしれません。

ちなみに、この文章はツルゲーネフの作品の一節です。

露検の文章のネタ元はロシアの教科書なんですね、きっと。

読みたい方はこちら。

И. С. Тургенев. Записки охотника. Текст произведения. Певцы (ilibrary.ru)

 

8)____ ей сожалеть,родных и близких у нее нет.

(解答)

Не о ком

(検討)

講評は、「сожалетьは前置格を伴い、о ком という形で使われます。ですから正解はНе о ком です」となっています。 

これも否定代名詞を元に動詞と前置詞の語結合の理解を試すものです。

「о」と結合する動詞には、говорить о, думать о, читать о, знать о, сообщать о,

мечтать о, беспокоиться о, волноваться о, заботиться о, спорить о, рассуждать о,грустить о, などたくさんあります。

 

9)____ мнениями я не могу согласиться.

(解答)

Ни с чьими / Ни с какими

(検討)

8)と同じく語結合の理解を試す問題です。正解が複数あるパターンでもあります。

Ни с чьими / Ни с какимиが正解となっています。

 

10)Я не слышу ____ голоса. Кажется,в соседней комнате ни одного человела.

(解答)

ничьего/никакого

(検討)

講評は、「『誰の声も』ですからничьегоが適切ですが、『どんな声も』という解釈もありえるのでникакогоも正解にします」、とあります。

 

2.対策

最近は文法の大問は「副動詞・形動詞etc」、「接頭辞+動詞」、「数詞」になっているため、「否定代名詞」(第60回)、「否定代名詞・不定代名詞」(第64回)が大問として出題される可能性は少ないとは思いますが、1級の学習到達度判定基準は「基本的にはすべての文法を習得していることが条件」なのですから、なにが出題されても意義は唱えられません。

今回のように「否定代名詞」がメインになっていても、正答するためには動詞、前置詞などの語結合、格支配の理解が不可欠です。

この点については、「ЧИСТАЯ грамматика 」の「Часть Ⅰ . ПАДЕЖИ」をしっかり学習しておけばいいんじゃないでしょうか。

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