ベラルーシでスパイ容疑で日本人男性が拘束されたそうだが、その特番がさっそくユーチューブでも閲覧できるようになっている。
ロシア語版だけでなく、なんと英語版もある。
特番の放送時間は15分57秒。
「ナカニシマサトシ」と名乗る人物が手錠をかけられ尋問に応じている映像のほか、キャスターが日本の諜報機関とのつながりを示すいろいろ証拠を示しながら「スパイ活動」の詳細を報じている。
キャスターは、「スパイ活動」ではこの日本人男性の妹の元夫だった人物もつながっているほか、指示役として日本大使館員で名が「サトシ」という人物もかかわっていると示唆している。
「ナカニシ」さんがいろいろとスマホで撮影しているところを遠方から監視しているとみられる映像もたくさんあって、けっこう長期間にわたり尾行されていることがわかる。
ベラルーシだけど、全部ロシア語。
「ナカニシ」さんがロシア語で語る部分には字幕がついているが、日本語で事件の核心を語っていると思われる部分は「ナカニシ」さんの日本語の音声が小さくて聞き取れず、正しくロシア語に翻訳されているのかチェックできない。
特番が「ナカニシ」さんの諜報活動の証拠として挙げる日本語の通話記録、その対訳としている(実際は対応していないのもある)ロシア語の内容のほか、「ナカニシ」さんが撮影しているもの(古い線路、おんぼろバス、トロリーバス、なんてことない集会)をみていると、これで諜報活動なんだろうか?、って疑問を持たざるを得ないって感じ。
とくに対訳とされるロシア語は、対訳だとすると誤訳のレベルを超えて証拠捏造といえるものになっている。
本人の証言も、都合のいいところだけを切り取って編集すれば、スパイ活動を自白したかのような印象を与える証言にすることなんて簡単だし、そもそも強制的に言わされた可能性もなきにしもあらずだから。
まあ、「露語学習帳」としては、政治的、外交的問題はよく分からないので、ロシア語の教材として、ちょっと訳していこうかなって思いました。
とりあえず、「武士道」の漢字がでる0分38秒のタイトル「東京からの『サムライ』の失敗」がでるとこまでを時間経過にしたがって、シナリオ風に追ってみます。
0:00 (ナレーション)
ゴメリで特別任務のサムライ(Самурай особого назначения в Гомеле.)
0:06 (日本人とみられる男性)
私は、ナカニシ・マサトシと言います(Меня зовут НАКАНИСИ Масатоси.)
0:11 (ナレーション)
「日本のスパイ」、珍しいですが、事実です("Японская разведка". Необычно, но факт.)
0:15 (日本人とみられる男性)
私の行動はベラルーシにとって危険なものになるかもしれません(Мои действия могут быть опасны для Беларуси.)
0:23 (ナレーション)
日本の諜報機関のスパイはベラルーシで何をしていたのか?(Чем занимался агент японской спецслужбы в Беларуси.)
0:29 (日本人とみられる男性)
もしかしたらベラルーシにロケット攻撃があるかも(Может быть, атака ракетой по Беларуси.)
0:30 (ナレーション)
さあ、では、ご覧ください!(Смотрите! Прямо сейчас )
0:38 (題字)
東京からの「サムライ」の失敗(Провал "Самурая" из Токио)
以上が特番冒頭のさわり部分。
「ナカニシ」さんはある程度のロシア語ができるみたいだけど、初歩的な文法の間違いもあって、字幕のロシア語は、「ナカニシ」さんが喋っているままではなくて、きちんと修正されています。
たとえば、0:15の部分。
「ナカニシ」さんは「私の活動」(мои действия)のところを単数形действиеで発音していますが、これだと「私」 は中性形(моё)にしなければなりませんが、男性単数形(мой)のような発音になっています。「ナカニシ」さんは「может быть」と続けてはいるので単数形で表現しようとしていたのでしょう。
また、「ベラルーシに危険」のところに、字幕は前置詞「для」を入れています。でも、「ナカニシ」さんは与格のつもりだったのかもしれませんね。
さらに、0:29の部分。
ロケットによる攻撃の部分ですが、単語の羅列です。「атака ракета(ы?) в Беларуси」と聞こえますが、「ベラルーシへのロケット攻撃」なら字幕のとおり、「атака ракетой по Беларуси」と前置詞поが適切なようです。
スパイ活動をする人物ならもっと現地語が堪能なんじゃないかって想像するけど、文法的な間違いも多く、発音もあまり良くありません。
もしかしてベラルーシ語なのかな、、、。ベラルーシ語は勉強したことないのでわかりません。
おまけに、ついでに見つけた英語版を張り付けておきます(↓)
冒頭部分だけみたけど、0:15のあたり、「私の名前はナカニシ・マサトシです」のあと、いきなり「日本のスパイ」って続けて、あたかもそのまま白状したんじゃないかって編集になっているのにびっくりしました。
というか、無茶苦茶な誤訳のとこもあります。英語版をそのままみるのは危険かも。