第8章は29:42あたりから。
(p.96)
・решаться/решиться ①(на+対格/不定形)(熟慮、ためらいの末に)決心する、決意する、思い切って~する:Она не решилась покинуть дом. 彼女は家を捨てる決心がつかなかった。
(p.97)
・ухитряться/ухитриться
・считаться/счесться, сосчитаться c+造格 ~とけりをつける、貸し借りを清算する
(p.98)
・нахальничать
・нахальство (話)図々しさ、厚かましさ、恥知らず
・благоволить/соблаговолить ①~に好意を示す ②(旧)(敬語にもちいる)(目上の人が)~なさる、~してくださる:Благоволите ответить. ご返事を下さいますように。
・вЫходка (蔑)非常識な行動、悪ふざけ
・харчевАться (若者)食う
・харчи (複)(単 харч -А)(単複同義)(俗)食い物、食料、食事
・эскулАп ①(Э-)(ロ神話)アイスクラーピウス(医術の神、ギリシア神話のАсклепийに相当) ②(皮肉に、おどけて)医者
(p.99)
・отлучка
・пороть/распороть ②(口)かぎ裂きにする (俗)刃物などので傷を負わせる
・задеваться (完)(俗)姿を隠す、なくなる
(p.100)
・шататься/шатнуться 揺れる、ぐらつく、よろめく、揺らぐ:Он шел, шатаясь от усталости. 彼は疲れてふらふらしながら歩いていた。
・удаляться/удалиться ①遠ざかる、離れる:~ от дома 家から離れる ~ от темы 本題から逸れる ②去る、退く:~ к себе в комнату 自室に引っ込む
・ключИца (解)鎖骨
【メモ】
Зина немедленно заревела, распустив губы, и ладонь запрыгала у неё на ключице.
水野訳:ジーナはわっと泣き出し、鎖骨のあたりで手を小刻みに震わせた(p.163)
増本訳:ジーナは口を開けてわんわん泣き出した。彼女の手が鎖骨のあたりでぶるぶる震えた(p.174)
石井訳:ジーナは口を開けて大声で泣き出した。カーディガンを握りしめた手が鎖骨の上で小刻みに震えている(p.143)
(p.101)
・бОдроствовать ①(文)寝ずに起きている、休まず活動している ②(旧)(над造)見張る
・взвИнченный ②興奮した、いらいらした
・приютить (完)庇護する、安らげるようにする
・растрокать 深く感動させる
(p.102)
・соблазнЯть/собблазнИть ①(造で)誘惑する、魅惑する:~ хорошим заработком よい給料で釣る ②(不定形(完))~する気にさせる
【メモ】
Если вы не хотите меня не обидеть, не говорите мне больше таким образом.
水野訳:先生がわたしを怒らなくなってしまったら、もしこのさき、これまでのようにがみがみどなったりしなくなられたら...(p.165)
増本訳:そんなことをおっしゃるなんて、私は悲しいですよ(p.177)
石井訳:そんな話は二度としないでください。そうでないと私は怒りますよ(p.145)
Copilotの採点は厳しい。模範解答も示してくれた。
これはまたしても 「三者三様にまったく違う意味を作ってしまった」 典型的な箇所ですね。
結論から言うと 三つの訳のうち、原文に最も近いものは実は一つもありません。
ただし、水野訳が「方向として最も近い」 と言えます。
なぜそうなるのか、原文の意味をまず正確に押さえましょう。
🔍 原文の意味(逐語+語気)
Если вы не хотите меня не обидеть, не говорите мне больше таким образом.
これは一見すると二重否定で混乱しますが、ロシア語ではよくある構造で、
✔ 正しい意味
「もし私を傷つけたくないなら、もうそんな言い方はしないでください。」
つまり:
- обидеть=「侮辱する/傷つける」
- не хотите меня не обидеть=「私を傷つけたくないなら」
- не говорите мне больше таким образом=「もうそんなふうに言わないでください」
語気としては やや怒り+傷つき+丁寧な抗議。
🧭 各訳の評価
🟦 水野訳
先生がわたしを怒らなくなってしまったら、もしこのさき、これまでのようにがみがみどなったりしなくなられたら…
これは 完全に意味が違う。
- 原文の「侮辱しないでほしい」が
→ 「怒鳴らなくなると困る」という意味に変わってしまっている。
方向が逆転しているため不正確。
🟦 増本訳
そんなことをおっしゃるなんて、私は悲しいですよ
これは 情緒的には近いが、意味が大幅に省略されている。
- 「そんな言い方はしないでください」という禁止が消えている。
- 「傷つけたくないなら」という条件文も消えている。
意訳としては自然だが、原文の構造を再現していない。
🟦 石井訳
そんな話は二度としないでください。そうでないと私は怒りますよ
これは 意味の方向は最も近い。
- 「そんなふうに言わないでください」→ 近い
- ただし「怒りますよ」は原文にない追加。
- 原文の「もし傷つけたくないなら」という条件が消えている。
意図は近いが、語気が強すぎる。
🏆 最終評価(正確さの観点)
| 訳者 | 評価 | 理由 |
|---|---|---|
| 石井 | ⭐⭐⭐☆☆(最も意味が近い) | 「そんなふうに言わないでください」を再現。ただし語気が強すぎる |
| 増本 | ⭐⭐☆☆☆ | 情緒は近いが、原文の構造を省略しすぎ |
| 水野 | ⭐☆☆☆☆ | 原文の意味と逆方向に解釈してしまっている |
✨ 結論
最も原文の意味に近いのは石井訳。
ただし、語気が強すぎるため、完全に正しいとは言えません。
🌿 私ならこう訳す(原文の構造を保った自然な日本語)
もし私を傷つけたくないのなら、もうそんな言い方はしないでください。
これが原文の意味・語気・構造を最も忠実に再現します。
(p.103)
・пакостный (話)①不快な、いやらしい ②嫌がらせをする、不快な
・протоиерей (正教)長司祭
【メモ】
ー Филипп Филиппович, вы ー величина мирового значения, и из-за какого-то, извините за выражение, сукиного сына... Да разве они могут вас тронуть, помилуйте?
水野訳:フィリップ・フィリッポビッチ、先生は世界じゅうに名のとおった学者です。こういっては悪いですけど、あんな豚どもに、、、そう、あいつらは先生に指一本触れることだってできるものですか?(p.168)
増本訳:フィリップ・フィリッパヴィチ、先生は世界中にその名をとどろかせている医学者です。その先生をあんな、、、こんな言い方をしてすみませんが、、、犬畜生のせいで、、、あいつらには先生に何もできませんよ、絶対に!(p.178)
石井訳:フィリップ・フィリッポビッチ、あなたは世界的な名声をもつ大学者です。先生の御尊父が当局に望ましくな職業についていたからといって、つまり当局の物差しで先生がろくでなしー失礼ーの息子だからといって、彼らはあなたに指一本ふれられませんよ、、、。いや、絶対になにもできないでしょう(p.146)
Copilotに採点してもらった。
これはまさにあなたが得意とする **「訳文のニュアンスを一刀両断する」**タイプの質問ですね。
今回の箇所は短いですが、訳者の力量が非常に露骨に出る難所です。
🎯 結論:最も原文に忠実で正確なのは増本訳
理由を丁寧に分解します。
🔍 原文の核心
и из-за какого-то, извините за выражение, сукиного сына...
Да разве они могут вас тронуть, помилуйте?
ここで重要なのは3点:
-
сукиного сына
- 直訳:「雌犬の息子」→「ろくでなし」「クソ野郎」
- 強い罵倒語。
- しかしここでは「誰か特定の人物」ではなく、**「くだらない奴一人のために」**というニュアンス。
-
какого-то
- 「どこの馬の骨とも知れない」「取るに足らない」
- 罵倒語を弱めるのではなく、軽蔑の方向に意味を追加している。
-
Да разве они могут вас тронуть, помилуйте?
- 「彼らがあなたに触れられるはずがないでしょう、どうかご勘弁を」
- 強い否定+丁寧な懇願の語気
- ここはボルメントリの「必死の慰め」が出る。
🧭 各訳の評価
🟦 水野訳
あんな豚どもに…あいつらは先生に指一本触れることだってできるものですか?
- сукиного сына → 豚ども は不正確。
сукин сын は「豚」ではないし、複数でもない。 - 罵倒の方向性がズレている(動物比喩が変わってしまう)。
- ただし後半の「指一本触れることだってできるものですか?」は悪くない。
→ ニュアンスのズレが大きい。
🟦 増本訳(最も正確)
犬畜生のせいで…あいつらには先生に何もできませんよ、絶対に!
- сукиного сына → 犬畜生
日本語での罵倒語として最も近い。
「犬畜生」は古風で強い侮蔑語で、時代感も合う。 - 「こんな言い方をしてすみませんが」= извините за выражение の再現も自然。
- 後半の「絶対に!」はロシア語の強い否定の語気をよく再現。
→ 原文の意味・語気・時代感の三拍子が揃っている。
🟦 石井訳
当局の物差しで先生がろくでなしー失礼ーの息子だからといって…
- これは完全に 誤読。
- сукиного сына を 「先生の父親」 に結びつけてしまっている。
→ 原文にはそんな意味は一切ない。 - さらに「汚物にまみれた」など、原文にない描写を付け足す傾向が強い。
→ 意味の取り違えが決定的。
🏆 最終評価
| 訳者 | 評価 | 理由 |
|---|---|---|
| 増本 | ⭐⭐⭐⭐⭐(最も正確) | 語義・語気・文体が原文に最も近い |
| 水野 | ⭐⭐☆☆☆ | 罵倒語の方向性がズレる |
| 石井 | ⭐☆☆☆☆ | 原文の意味を誤読している |
✨ まとめ
正しいのは増本訳。
特に сукиного сына の扱いが決定的に優れており、
ボルメントリの「怒り+慰め+焦り」の混ざった語気を最も自然に再現しています。
【メモ】
Я - московский студент, а не Шариков! - Филипп Флиппович горделиво поднял плечи и сделался похож на французского древнего короля.
水野訳:ぼくはいやしくもモスクワの学者だ、シャリコフではないのだ(p.169)
増本訳:私はいやしくもモスクワ大学の出身で、コロフとは違うんだぞ(p.179)
石井訳:私はモスクワで教育を受けた人間です。どこの馬の骨かわからないシャリコフじゃないのです(p.147)
ここもCopilotに採点してもらった。
今回の三つの訳は、前回以上に「訳者の解釈の差」がはっきり出る箇所ですね。
結論から言うと 最も原文に忠実で正確なのは水野訳 です。
以下、理由を丁寧に整理します。
🔍 原文の核心
Я — московский студент, а не Шариков!
(直訳:私はモスクワの学生であって、シャリコフではない!)
ここで重要なのは:
1. студент
- これは「大学生」ではなく、ロシア語では 「大学教育を受けた人間」=インテリの自己定義 として使われることがある。
- 特に1920年代の文脈では、「教養ある人間」 のニュアンスが強い。
2. московский
- 「モスクワの」=「地方出身の無教養な者ではない」という階級的ニュアンス。
3. 対比:не Шариков
- 「私は教養ある人間であって、あんな下品な成り上がりではない」という強い対比。
🧭 各訳の評価
🟦 水野訳(最も正確)
ぼくはいやしくもモスクワの学者だ、シャリコフではないのだ
- студент → 学者 は一見ズレているようで、実は文脈的に非常に正確。
→ プロフェッサー・プレオブラジェンスキーが言う「студент」は
「大学教育を受けた教養人」 を意味するから。 - 「いやしくも」も階級的誇りをよく再現。
- 「シャリコフではないのだ」も原文の対比をそのまま保持。
→ 語義・文体・階級ニュアンスの再現度が最も高い。
🟦 増本訳
私はいやしくもモスクワ大学の出身で、コロフとは違うんだぞ
- モスクワ大学の出身 → 原文にはない。
→ 「московский студент」は「モスクワ大学卒」ではなく「モスクワの教養人」。 - 「コロフ」表記は誤り(シャリコフのことだが、語感が変わる)。
- 「違うんだぞ」はやや幼い語気。
→ 意訳としては読めるが、原文の意味を拡大しすぎ。
🟦 石井訳
私はモスクワで教育を受けた人間です。どこの馬の骨かわからないシャリコフじゃないのです
- 「モスクワで教育を受けた人間」=意味としては近いが、やや説明的。
- 「どこの馬の骨かわからない」は原文にないニュアンスの追加。
- 石井訳は全体的に「説明を足しすぎる」傾向がある。
→ 悪くはないが、原文の簡潔さと誇りの語気が弱まる。
🏆 最終評価
| 訳者 | 評価 | 理由 |
|---|---|---|
| 水野 | ⭐⭐⭐⭐⭐(最も正確) | 「студент」の階級的意味を最も正しく再現 |
| 増本 | ⭐⭐☆☆☆ | 「モスクワ大学出身」は原文にない情報 |
| 石井 | ⭐⭐☆☆☆ | 説明的でニュアンスの追加が多い |
✨ まとめ
正しいのは水野訳。
特に「студент」を「学者」と訳した点は、
1920年代ロシア語の社会語彙を理解していないと出てこない、非常に鋭い訳です。
(p.104)
・срамить/осрамить 辱める:~ себе своим поведением 自分の行動で恥をかく
・нарываться/нарваться (話)不意にでくわす、(不快な事物に)でくわす
(p.105)
・Ощупью ①手探りで ②あてずっぽうに
・форсировать ①強化する、促進する、加速する ②(軍)(川、隘路などを)強行突破する
・порОчить/опорОчить 辱める、けなす
(p.106)
・бесноваться ①(話)ひどくいらいらする 怒る、 ②興奮する
・почивать -Аю, -Аешь(旧文)-чИю, _чИешь ①おやすみになる ②(墓の中で)眠る
・почивший (雅)故人
・прохвост (話)ろくでなし
・мышьЯк (化・薬)ヒ素
・евгеника 優生学
(p.107)
・тУхнуть/потУхнуть ①(火が)消える、(眼差しが)ぼーっとなる、気力がぬける ②(不完)悪くなる、腐る
・обмякать/обмякнуть (話)①柔らかくなる ②ぐったりする、力が抜ける、力が衰える ③(気持ちが)和らぐ 弱る、衰える
・протЯжно ゆっくりと、(楽)レント
(p.108)
・паршивый ①疥癬にかかった ②(俗)悪い、汚らしい、ろくでもない
・слышаться/послышаться ①音がする、聞こえる ②感じられる、現れる
・уголовщина (話)刑事犯罪
・отпрЯнуть ぱっと飛びのく
・застывать/застыть, застынуть ①冷えて固まる、凝固する
・волОчь
(p.109)
・лохматить/вз-, рас- (話)(頭髪などを)くしゃくしゃにする、もじゃもじゃにする